伝説の斜め上をいく役行者が造った金峯山寺(きんぷせんじ)金剛蔵王権現(こんごうざおうごんげん)【秘仏ご開帳情報】

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金峯山寺(きんぷせんじ)という奈良の人以外はなかなか読めないお寺が、吉野にあります。

金峯山寺は修験道(しゅげんどう)のお寺です。その本堂はものすごく立派なもので、その大きさは奈良の大仏で有名な東大寺に次ぐ大きさ。

そこに、三体の秘仏がいらっしゃいます。(これまた大きいこと山のごとし。仏像そのもののインパクトもすごい。)

そんな秘仏がまもなく御開帳です。
まだごらんになられたことのない方は、ぜひ一度見に行ってください。
度肝を抜かれることまちがいなしの、ものすごい仏さまです。

 

修験道の寺、金峯山寺

金峯山寺のある吉野山(よしのやま)は修験道(しゅげんどう)の聖地として、太古の昔から信仰のあつまる地です。

案外他県の人には知られていない修験道。日本でうまれた数ある宗教の中の一つです。

まずは少しだけ修験道について説明しておきましょう。

 

日本の宗教のはじまり

宗教とは、もともと自然への恐れから生まれたものです。

なぜ風は吹き、なぜ雨は降り、なぜ日は照るのか。
嵐はどうして起こり、山は誰につくられ、稲穂はどうして実りをもたらすのか。

このような理由のわからない、けれど間違いなく目の前に存在するもの、自然に人々は不思議を感じ、恐れました。

そして
≪ 人を凌駕する巨大な存在 = 自然 = 神 ≫
と、信仰につながっていったわけです。(ちなみにこれは世界各地のはじまりの宗教に共通しています。おもしろいですよね。)

この信仰は『古神道(こしんとう)』『自然信仰』などと呼ばれます。

 

修験道

金峯山寺のある吉野山(よしのやま)は修験道(しゅげんどう)の聖地として、太古の昔から信仰のあつまる地です。

“寺”とついているので、仏教のお寺とかんちがいされる方もいらっしゃるのですが、修験道と仏教はかなり異なる性格をしています。

仏教は、もとは現在のネパールあたりで生まれ、大陸を伝わり、日本へは飛鳥時代に朝鮮半島からきた(正確には献上された)宗教です。

仏教と一言でいっても、伝わるうちににさまざまな形に変化していったので土地や宗派によって教えも微妙にちがいますが、日本の仏教は大きくまとめて『大乗仏教』という仏教に属し、簡単にいうと「すべての人は救われる」という教えです。

修験道はこの大乗仏教と、自然信仰のなかでも山岳信仰(山を神聖視する信仰)が融合したものです。※道教や儒教、陰陽道や民間信仰なども取り入れられたともいわれます。

山岳信仰では『山には祖霊が籠る』=『自然界は人間界とはまったく異なった世界(異界)』と考えました。

大乗仏教(とくにその中でも密教)は大日如来を宇宙仏(=宇宙の真理を仏格化したもの)として、大日如来の教えを宗教化したものです。

修験道では山を仏そのもの、曼荼羅(まんだら:仏の世界をあらわしたもの)とみて、山中にあるすべてのものを大日如来の説法であると考えています。

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修験道をつくりあげた役行者(えんのぎょうじゃ)

修験道の開祖は役行者(えんのぎょうじゃ)という仙人のような人です。※役小角(えんのおづぬ)ともいいます
県外の人は読むのもむずかしいですが、奈良の人はほとんどの人がよめます。(たぶん)
「行者さん」なんて親しげに呼ぶ人も山間部ではよくみかけますね。

役行者は現在の奈良県御所(ごせ)市で産まれました。
彼はかなりすごい法力(ほうりき:空を飛んだり海を歩いたり鬼を自在にあやつったり…)の持ち主です。

若いころは大阪と奈良の県境にある金剛山(こんごうさん)、葛城山(かつらぎさん)で山岳修行をつみ、その後は熊野や大峯(おおみね)でさらに山岳修行を積み、最終的にこの吉野山で金剛蔵王大権現(※今回みられる秘仏です。)を感得(かんとく:感じ、悟ること)し、その地にこの金峯山寺をつくったのです。

そのため金峯山寺は修験道の本山といわれています。

※奈良につたわる数々の伝説はいろいろと“斜め上”なかんじものが多いですが、その中でも役行者伝説のすごさは余裕で三本のゆびに入るレベルです。めちゃくちゃおもしろい。いつか役行者伝説についてもくわしく書きますね。

 

青の異形、金剛蔵王権現

役行者が感得したという、そして今回ご開帳される“金剛蔵王権現”(こんごうざおうごんげん)とはいったい何者なのでしょうか。

できるかぎりわかりやすく説明していきたいと思います。

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役行者のおこなった千日回峰行(せんにちかいほうぎょう)

前項でさらっと書きましたが、蔵王権現は役行者が“山岳修行”をした結果、感得した仏さまです。

この山岳修行は非常に厳しいもので、千日回峰行(せんにちかいほうぎょう)といいます。

千日回峰行とは、修験道において最も厳しいと言われる荒行(あらぎょう)です。よくこの修行中に人が死ぬ、というか1300年で二人しか達成していないそうです。

千日回峰行は、『奈良県吉野の大峯山(おおみねさん)の上本堂までの険しい山道(…といってもほとんど道とはよべない)48kmを1000日間一日も休まず(閉山日除く)毎日のぼり、1000日が終わったら飲まず・食べず・寝ず・横にならずを9日間耐える』という行(ぎょう)。

途中でやめることは許されず、どうしてもやめたい場合は切腹もしくは絞首して命を絶つこと、となっているそうな…。

そんな修行を考え付いた役行者、相当やばいです。

 

役行者の前にあらわれた仏たち

役行者は、この荒れた世を強い力で救ってくれるものを修行の中で探し求めたのですが、その際、釈迦如来(しゃかにょらい)、千手観音(せんじゅかんのん)、そして弥勒菩薩(みろくぼさつ)が順番に現れたそうです。

それだけでもすごいことですが、そのときに役行者はその仏たちにダメ出しをします。

「釈迦はお姿が優しすぎて乱世のこの世には響かない」
「千手観音はそのお姿をあらゆる姿に変えられるが、ふさわしくない」

そして最後に現れた弥勒菩薩に
「もっと強く悪をふりはらう仏を」
と言いました。

すると、地が割れ、雷鳴が鳴りひびき、憤怒の形相で現れたのが蔵王権現だったのだそうです。

 

修験道の本尊、蔵王権現

蔵王権現とは、先に現れた釈迦如来と千手観音と弥勒菩薩が役行者の願いどおり姿を変えたお姿でした。(ちなみに権現とは仮の姿、という意味をもちます。)

そのお姿を彫ったのが、今回の秘仏、三体の金剛蔵王権現です。
そしてその三体はそれぞれ過去、現在、未来をつかさどっています。

はじめて蔵王権現をみた人は、必ずおどろきます。
おだやかな仏さまのイメージとはほど遠い、荒々しいそのお姿に。

巨大な体に真っ青な肌、
風にふかれて逆立った金色の毛、
大きくあけた口はまっ赤に燃え上がり、
そこからイノシシのような太い牙がはえている。

まさに、異形(いぎょう)。

たかく振り上げた片腕と片足は、今にもお堂からぬっと歩みだしそうな躍動感をあたえます。

奈良の大仏よりもはるかに大きなその異形を前にすると、だれしも思わず口をつぐんでしまいます。

 

許しの仏、蔵王権現

上から見下ろす憤怒の形相を目の前にすると、思わずすくみあがってしまいますが、勇気をもって自分のはたらいた悪事を懺悔(ざんげ)すると、蔵王権現はすべて許します。

そんな厳しくも救いを与える蔵王権現。
その総本山吉野山には太古から多くの人が落ち延びてきたり、身を隠しに来たという歴史があります。

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自らの罪を悔い、懺悔しに、山深い吉野まで救いを求めに来た人々。
その想いをすべて受け止めてきた、三体の蔵王権現。

あなたも、たまには祈り願うだけでなく、懺悔する参拝をしてみませんか?

 

貴重な御開帳は春と秋だけ。
吉野は桜の名所としても有名なので春はおそろしく込み合います。まだ人の少ない秋に行くことをオススメしますね。

 

金峯山寺拝観・アクセス情報

奈良県吉野郡吉野町吉野山

拝観情報

拝観時間:8:30~16:30(受付は16:00まで)
 ※朝座勤行7:00~(冬季)、夕座勤行17:00~ もオススメ!
拝観料:大人1000円、中高生800円、小学生600円
 (上記は特別御開帳期間の拝観料です。通常は大人500円、中高生300円、小学生200円)
御開帳期間:平成28年11月19日~12月11日

アクセス

電車:近鉄吉野駅から徒歩約15分
近鉄吉野駅からロープウェイに乗継ぎ、終点から徒歩約10分
車:専用駐車場なし
下千本駐車場から徒歩約15分

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ABOUTこの記事をかいた人

Fumie Katayama

奈良の戦える女将。 母の影響で幼い頃から民俗学が好きだったものの、マッドサイエンティストに憧れて学生時代はバリバリの理系。[東京農工大学 工学部 有機材料化学科卒][同大学 技術経営研究科 技術リスクマネジメント専攻卒(研究分野:光学ポリマーアロイの複屈折制御)]武道も好きで、テコンドー(ITF)をしていたことも。[学生テコンドー全国選手権大会 トゥルの部二連覇(2008)(2009)、スペシャルテクニックの部優勝(2009)]就職を利用して一度住んでみたかった奈良県へ移住。古都奈良で1400年間言い伝えられてきた伝説、伝承、信仰、民俗芸能など生きた文化を目の当たりにし、眠っていた民俗学好き魂が再燃。『こんなにあやしくておもしろくてディープな奈良をもっと知ってほしい』という想いから、現在は"奈良のあやしくてかわいい宿"を開業するべく準備中。